(11)星見で宇宙を散策 OWL のひとりごと
星見で宇宙を散策( Ⅰ )散光星雲がいざなう宇宙
2015.7.16
M8(干潟星雲)と M20(三裂星雲)
突然だが「宇宙」の話も始まる。「散策」の範囲がずいぶんと拡がって来た。日本と世界の歴史→人類や日本人のルーツ→地球の歴史(地質学のページ)→そして「星見で宇宙を散策」という本コーナーである。
おいおい話を進めるが、ここではまず自分で撮った宇宙の姿を紹介しよう。これは先日山梨県河口湖で撮った写真である。
M8(干潟星雲)と M20(三裂星雲)
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宇宙空間は完全な真空というわけではない。星と星のあいだにガスが拡散しているところがある。恒星がその一生を終え、超新星爆発を起こした残骸などが一例である。
水素ガスは赤〜赤外部の光を放つ。赤外部は肉眼では見えないし、赤もかすかに見える程度である。その光が何千光年という距離を旅してはるか地球に届く。肉眼ではかすかにしか見えない赤と肉眼では見えない赤外部の光を、特殊なカメラが捉える。
ガスが塊として存在している場合、私たちには赤い雲のように見える。赤い雲などは散光星雲と呼ばれる。写真中央下部は干潟星雲と呼ばれる。星雲や星団(星の群れ)には記号がつけられている。干潟星雲はM8。むかしメシエという人が観測してつけた番号だ。
中央やや右上が三裂星雲と呼ばれる。メシエによるとM20である。三つに分裂しているように見えるためこう呼ばれる。だが黒い部分は、散光星雲の手前に存在する暗黒星雲の姿によるらしい。後ろにある散光星雲が三つに分裂しているように見えるだけだ。
青い部分が直近上側(北側)にある。それは反射星雲と呼ばれる。ガスに含まれているチリが近くの恒星の光によって照らし出され、散乱光を発するためだ。
赤い部分は反射星雲ではない。恒星の高いエネルギーによって水素ガスが電離する。電離した時に発するエネルギーがスペクトル(輝線)となってはるか旅をする。地球上の私たちに届くのである。こうした水素ガスによるものは輝線星雲と呼ばれる。
M20の上(北)にはM21とされた星団が存在し、この写真の視野にもとらえられている。
M8は双眼鏡でも観察可能である。M8を横切るように帯状の暗黒星雲が存在する。そのため干潟星雲の名がつけられた。
M8と同じ位置に星の群れ(星団)が重なって存在する。星の集団がかたまっていた状態から散らばっていく状態に変化しているように見えることから、散開星団と呼ばれ、NGC6530と記号(後述)がつけられている。
写真左下の星の集団はNGC6544と名付けられた星団である。
M8+M20+M21は射手座にある。
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2015.7.16
NGC7000(北米星雲)と IC5067〜5070(ペリカン星雲)
次の写真もM8+M20+M21と同じ夜に撮ったものである。
NGC7000(北米星雲)とIC5067〜5070(ペリカン星雲)
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北米星雲は白鳥座α星デネブの近くにある。肉眼では見えにくい。しかしたいへん大きな星雲で北米大陸にソックリ。説明は不要だろう。ペリカン星雲もその姿から連想されて名付けられた。
NGC7000とかIC5067〜5070というのは、メシエ以降、さらに沢山の星雲や星団が観測され、系統的に分類し記号を付けた人(人たち)がいる。そう覚えておくだけでよい。
画像をクリックして大きな画像にジャンプできる。アップロード前の画像を高解像度モニターで見ると、より小さな星まで詳細に観察することができる。数多の(それこそ無数の)星で画像全体がもっと白っぽい。
もちろんもっと綺麗に撮れただろう。さらに工夫も必要だろう。ともあれこうしたフォトジェニックな星たちの姿は私たちを宇宙にいざなう。少なくとも本ブログ筆者はそのトリコにならんとしているようだ。
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2015.8.27
微光星雲のあぶり出し方
いくら特殊なカメラであっても、いきなり前出のような画像にはならない。散光星雲はかすかな光がようやく地球に届く。微光星雲とも称される。M8(干潟星雲)と M20(三裂星雲)は三分シャッターを開いたままにして一枚撮る。十数枚同じようにして撮影した。帰宅後、コンピュータ上で適当な枚数(今回は十枚)重ねた。それが次である。
M8(干潟星雲)と M20(三裂星雲)
コンピュータ上で補正をかけ、
コンピュータ上で補正をかけているところ
さらに補正をかけ、
もっと補正をかけたところ
さらにさらに補正をかけ、
もっともっと補正をかけたところ
次のように一応の完成を見る。
いちおう完成!
ISO400、総露光時間30分間
NGC7000(北米星雲)とIC5067〜5070(ペリカン星雲)の場合は、四分シャッターを開けて撮影。それを十数枚撮りためる。帰宅後、コンピュータ上で適当な枚数(今回は四枚)重ねたのが次である。
NGC7000(北米星雲)とIC5067〜5070(ペリカン星雲)
オリジナル写真は縦だった
コンピュータ上で補正をかけ、
コンピュータ上で補正をかけているところ
さらに補正をかけ、
さらに補正をかけているところ
反時計回りに90度回転
完成すると次のような写真になる。
これくらいかな?
満足はできないが、この日は一応これで完成とした
ISO400、総露光時間16分間
比較明合成という方法で処理すると次の通りとなり、
ISO400、総露光時間16分間、比較明合成
平均加算合成法を用いると次のとおりとなる。それぞれ全く別の絵として生まれ変わる。
ISO400、総露光時間16分間、平均加算合成
クリックして拡大
このようにして白っぽいオリジナルデータから微光星雲の姿をあぶり出してゆく。ちなみにこの画像はHαという波長の光を従来よりも四倍の強さで透過するフィルターを使ったカメラによって得られた。他のカメラで撮ったより赤色が強調されているかもしれない。いずれにせよいつまでも満足はできず妥協点を探るしかないのである。
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星見で宇宙を散策( Ⅱ )一番手近な天体を大画面で
2015.8.12
月の撮り方さまざま
天体観測は何も遠征が必須なわけではない。自宅のベランダや庭からでも可能だ。光害のある街中でも、明るい天体は普通のレンズや望遠鏡で充分だ。ただし微弱な光の星は冷却CCDなど特殊で高価なカメラが必要。
特に月は一番近い天体で明るいため、観るにも撮るにも絶好の対象である。
晴れの海を中心に、月齢8.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
静かの海と豊かの海を中心に、月齢8.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
蒸気の海、中央の入り江、クレーターのプトレマイオス、
アルフォンス、アルザッケル(中央上から下へ)、月齢8.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
クレーターのプトレマイオス、アルフォンス、
アルザッケル(中央上から下へ)、月齢8.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、
デジタルテレコンONで188倍相当
月齢10.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
月齢10.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
デジタルテレコンON
月の見え方は月齢によって変わる。ちょうど欠け際のところが地形の影が強く出るのでコントラストが良い。
クレーターのコペルニクス(中央)とケプラー(左)、月齢11.42
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
月齢11.42
35mm換算で焦点距離1696mm、
月齢11.42
35mm換算で焦点距離1696mm、デジタルテレコンON
月齢12.37
35mm換算で焦点距離1696mm、
月齢12.37
35mm換算で焦点距離1696mm、デジタルテレコンON
クレーターのティコ、月齢12.39
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
クレーターのティコ、月齢12.39
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、
デジタルテレコンON、188倍相当
しめりの海(画面中央上部)、クレーターのシッカルト(画面中央下部)、
月齢12.43
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
クレーターのシッカルト(画面中央)、月齢12.43
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、
デジタルテレコンON、188倍相当
クレーターのシッカルト、月齢12.43
35mm換算で焦点距離1696mm、
5mm接眼レンズ使用、
デジタルテレコンON、678倍相当
ここまで拡大すると解像度は良くない
眼で確認した方がまだマシだった
拡大した写真を何枚か撮り、それをあとでつなぎ合わせる手法がある。モザイク合成と呼ばれる。初めてチャレンジした。
晴れの海(中央下)、月齢12.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍
こうして撮った16枚を合成した写真が次である。
月齢12.48
35mm換算で焦点距離1696mm、
18mm接眼レンズ使用、94倍相当16枚をマージした。
条件の悪い夜もある。薄雲が上空はるかかなたにかかっていて露光時間を長めにしても綺麗な写真は撮れなかった。
月齢13.46
35mm換算で焦点距離1696mm
月齢13.46
35mm換算で焦点距離1696mm
デジタルテレコンON、4枚をモザイク合成
本サイトでは少し小さめ(0.9X)のサイズで表現した
月齢13.46
35mm換算で焦点距離1696mm
デジタルテレコンON、4枚をモザイク合成
周辺を塗りつぶすとこのようになる
本サイトでは少し小さめ(0.9X)のサイズで表現した
2015年7月は満月が二回観られるめずらしい月だった。同じ月の二度目の満月をブルームーンと英語圏では呼びならわす。30日夕暮れ前、月齢14.36の月が昇るとそこに夕焼け雲が薄くかかっていた。10分もしないうちに夕焼けは消褪。急いでシャッターを切った。
レッドムーン(と勝手に呼ぼう)
そのあとは天候に恵まれ快晴。佳いお月見の夜となった。
月齢14.65
35mm換算で焦点距離1696mm
クレーターのコペルニクス(画面右上)とティコ(画面下)、月齢14.48
35mm換算で焦点距離1696mm
18mm接眼レンズ使用で94倍
月齢14.48
35mm換算で焦点距離1696mm
18mm接眼レンズ使用で94倍
14枚をモザイク合成
本サイトでは少し小さめ(0.86X)のサイズで表現した
月齢14.48
周辺を塗りつぶしてできあがり
若干の露出補正をかけた
本サイトでは少し小さめ(0.86X)のサイズで表現した
星見で宇宙を散策( Ⅲ )月を4Kムービーで
2015.8.12
4Kムービーでお月見
月を撮り始めるといろいろ興味がわいてくる。静止画で充分だと思っていた月がムービーで撮るとどうなるか?試すとなかなか面白い。撮れた4K動画を順にアップしてみよう。
月齢13.46/Moon at Age of 13.46/4K
黒い雲が月の表面を撫でて動いているかのよう
マシン環境で直接YouTubeサイトを利用した方が良ければ次のurlで
https://www.youtube.com/watch?v=lbs1cY2vYG8
4Kで是非ご覧ください
月齢14.57〜14.65は満月と言って良い。撮影したのはいわゆるブルームーンである。ただ正確には月齢14.74が満月。その少し前でも後でも、月の東または西側が僅か欠けて見える。
月齢14.57、14.61、14.65、18.61、19.59
Moon at Age of 14.57, 14.61, 14.65, 18.61 & 19.59/4K
マシン環境で直接YouTubeサイトを利用した方が良ければ次のurlで
https://www.youtube.com/watch?v=J7d1REmBmFU
4Kで是非ご覧ください
星見で宇宙を散策( Ⅳ )銀河を撮ると何を想う?
2015.8.12
M31アンドロメダ銀河
初心者向けの明るく大きな銀河がある。有名なアンドロメダ銀河だ。我々の地球が属する天の川銀河のお隣りさんで、250万光年の距離にある。
アンドロメダ銀河は「渦巻銀河」で天の川銀河より大きいという。天の川銀河はアンドロメダ銀河と違って「棒渦巻銀河」なのだそうだ。
アンドロメダ銀河はとてつもない速度で我々に接近している。40億年後には天の川銀河と衝突。20億年かけて融合し巨大な楕円銀河「ミルコメダ」を形成するという。何と気の遠くなる話だろう。
天の川銀河ですら大きいのに、この宇宙はとてつもなく大きな拡がりを持っている!
星見で宇宙を散策( Ⅳ )流星に遭遇する喜び
2015.8.25
ペルセウス座流星群
流星の写真は撮ろうと思って撮れるものではない。しかし撮ろうとしないと撮れないものであり、たまたま写っているものでもある。
真っ黒な背景に満天の星が降るように輝き、周囲は自然光がなく漆黒の暗闇。カメラをセットして自動撮影を開始。次の作業に没頭していると、周囲が一瞬だけ光り輝く。そしてまた何ごともなかったかのように元の暗闇が辺りを被う。
自動撮影終了を待って画像を一枚一枚チェックすると、何と次のような写真が撮れているではないか。何とも言えない感動に包まれる。
北海道北見市郊外で遭遇した大火球(流星)
クリックすると大きな画像に
この流星の放射点を辿ってみると、ペルセウス座の振り上げた右腕の横を通る。
同じ夜、別の流星も写り込んでいた。今度のはペルセウス座の近く。格星座や恒星のアサインメントと並べる形で貼付けることにする。中央の上の二つの光跡は人工衛星のものだろう。中央下の控え目だが虹色に光るのが流星だ。
北海道網走市郊外で遭遇した流星
明け方に撮れた控え目な流星の光跡
クリックすると大画面に
大火球もこちらの控え目な光跡も、どちらもペルセウス座流涎群の一部をカメラに収めることができたと判断した。
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